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「イザナ……そんなに緊張するのですか?」
俯き、アルマはもじもじする。顔は真っ赤だった。
「うん。アルマって美人だから、誰だって緊張するよ」
とてつもない殺気が近くから放たれてくるが、イザナは気づかないふりをした。
「そ、そんなことを言っても、なにもありませんよ」
アルマは顔を手で隠しながら、腰をくねくねさせる。
しかし。
「イザナ……?」
イザナからの反応がないかとを不思議に思い、アルマは顔をあげる。
と。
さきほどイザナがいた場所には誰もいなかった。
しばらく呆然として。
自分が騙されたことに気づき、眉をつりあげる。
全身からどす黒いオーラが。
「チカゲさん!」
アルマはなにもない空間に呼びかける。
天井近くの闇が揺らいだ。
「……何ですか?」
一人の人物が音もなく着地する。
声は低いが、女性らしかった。全身くろずくめで、目の前にいるというのに存在感があまりなかった。フードを深くかぶっている。
彼女の名前はチカゲ=セイズ。彼女の家系は代々、影から女王の【後継】を守る役目だった。
「チカゲさん、ただちにイザナをとらえなさい」
そう言うアルマ。
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