第一章 王都クロス

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☆ 頭上に銀色の大きな満月が一つ、浮かんでいる。 この世界には十二個の月が存在し、それぞれの月には『神様』がいると噂があった。 真実なのか。偽りなのか。わからない。 それを調べた者などいなかった。 月は地上からはるか上空に位置し、どんな力をもってもたどりつくことができない。 たとえ。 伝説の魔法でも。 今は失われた力。 ☆ 紋章の王国。 静かな道を一人の少年は歩いていた。 年の頃は十七くらいか。 黒い瞳と黒い髪。 端正な顔立ちをしているものの、優柔不断そうな雰囲気をしていた。 旅装束姿である。 どこにでもいるような少年。 しかし。 彼には何か浮いているところがあった。
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