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彼の肩には一匹の小さな白狐がのっていた。
不思議なことに白狐のお尻には筆のような尻尾が二本ある。
白狐の姿は暗闇の中でも美しく見えた。
淡いルビー色の瞳が稟と輝いている。
「マスター、どうしましたか?」
と。
少年の耳に聞こえてきたのは、透き通るほど澄んだ女性の声。
あたりには少年に聞く女性の姿などなかった。
しかし、少年はいつものことのように、
「眠い……」
いかにも眠そうに答える。
白狐は頭上に顔を向けた。
「もう夜中ですわね」
「あぁ、夜中だ」
少年は頷いた。
「子供じゃなくても、大抵の人間なら寝静まっている時間帯だ」
「何が言いたいのですか?マスター?」
嫌な予感を覚えたというように白狐は少年を見る。
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