第一章 王都クロス

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彼の肩には一匹の小さな白狐がのっていた。 不思議なことに白狐のお尻には筆のような尻尾が二本ある。 白狐の姿は暗闇の中でも美しく見えた。 淡いルビー色の瞳が稟と輝いている。 「マスター、どうしましたか?」 と。 少年の耳に聞こえてきたのは、透き通るほど澄んだ女性の声。 あたりには少年に聞く女性の姿などなかった。 しかし、少年はいつものことのように、 「眠い……」 いかにも眠そうに答える。 白狐は頭上に顔を向けた。 「もう夜中ですわね」 「あぁ、夜中だ」 少年は頷いた。 「子供じゃなくても、大抵の人間なら寝静まっている時間帯だ」 「何が言いたいのですか?マスター?」 嫌な予感を覚えたというように白狐は少年を見る。
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