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「膨れてないもん」
少女はそっぽを向いた。
しかし彼女の頬はパンパンに膨れ、少しでもつついたら割れそうだ。
白蜥蜴は呆れたように息をつく。
「で?」
『で、とは?』
「だから、居場所。アナタはアタシの案内役でもあるんだからね」
『彼が居る場所は紋章の王国だ』
「紋章の……王国」
少女は唇を噛み、強く手を握った。
その表情は先程までの能天気さはなく、ほの暗い憎悪、怒りに似た色が顔に広がっていた。
「なるほどなるほど。そこにいるわけだぁ」
少女は地面を蹴りつけると指をある方向に向けた。
「この先にいるんだね!待っててね、【イザナ】!!」
少女にすればバッチリ決めたつもりなのだろうが――
『悪いのだが、紋章の王国は逆の方向だ』
白蜥蜴の言葉は意気込む少女の耳には届かなかった。
☆一部完☆
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