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「さっさとここから逃げようか」
魔力封じが施された場所だというのに、イザナは世間話でもするように言った。
「君になら簡単なことだらう?【紅姫】(べにひめ)様?」
アーシャは小さく頷いて、
「それでは脱獄になりますが?」
「そうだね。でも、ここにいるよりマシだ」
イザナにアーシャは微笑んだ。
「そうですわね。それから……」
アーシャはイザナの目を見る。
「わたくしのことをそう呼ばないでくださいな」
そう呟くアーシャはどこか悲しげであった。
イザナは頷いて、
「わかった。じゃあ、よろしく頼むね。【焔牙】(フレイズファング)アーシャ殿」
アーシャはイザナの横に並ぶと、鉄格子の前に立った――。
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