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「エルマ!」
そう声をかけられたのは、エルマが城の南門から出ようとしたときだった。
驚いて振り返ってみれば、近寄ってくる少女が一人。
「アルマ……姉様?」
銀髪を風に揺らし、アルマが歩いてくる。
「どうしたの、姉様?」
エルマは不思議そうにアルマを見た。
つい先ほど夕食をすませたたばかりである。そのときは無言で、姉妹は三人はまったく会話しなかった。
みんな多忙で、抱えている仕事がいっぱいあるので夕食が終わったらすぐに食堂を出たのだ。
「どうしたの、じゃありませんよ」
アルマは妹に視線を向けて言った。
「そんなに急いでどこに行くんですか?」
「仕事のこと、姉様には関係ないと思うけど……」
きつく言ったかな……。
と思いつつも、エルマは口にする。
「そうだけど。妹のことを心配してなにが悪いのですか?」
「姉様……姉様の気持ちは嬉しいけど。これは言えないの」
エルマは視線を逸らしながら言う。
「エルマ……なにかわたしに隠していません?」
姉の言葉に、
――ぎくっ!
エルマは内心で動揺する。
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