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「別に隠してなんか……」
そう答えながらも、エルマは視線を泳がせる。
「エルマのくせです。隠し事をするとき、視線が泳ぐのは」
アルマの指摘に、
「はぅ……」
とエルマは顔を隠すが遅かった。
「エルマ、わたしに何を隠しているんですか」
アルマは静かに妹の目を見つめる。
「わたしが知らないとでも?あなたが最近、ラグナス家にいったりしているのを知っているのですよ」
「そ、それは……」
エルマは口ごもった。
はやくイザナを釈放したいから身元受取人になってほしいとラグナス家にいっていた。
しかし、ラグナス家の当主代理はうん、とは頷かなかった。
何度交渉しても結果は同じ。
アルマにイザナのことは言えないとエルマは思った。
イザナがいなくなったとき、姉がどういうふうになっか知っているからだ。
アルマは一週間ばかり部屋から出てこなかった。
「わかりました」
アルマは小さく頷くと、腰の剣に手をのばした。
「――姉様!?」
驚くエルマの前で、姉姫は剣を静かに引き抜く……。
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