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エルマは姉に向けて右手を差し出すように構えるのだが……。
――いない!?
すでに目の前に姉の姿はなかった。
かわりに背後に出現する気配がひとつ。
そして、頬に触れる冷たい感触。――剣?
「エルマ、油断のしすぎですよ?」
聞こえてきた姉の声。
――油断は……してなかった。
姉は紋章を使わない――使えないと知っていたが、姉の姿を見失わないように見ていた。
エルマはいまさらながらに姉がどう呼ばれているか知った。
姉はいくつも名前で呼ばれていることがある。
――【癒しのお嬢様】。
――【日だまりの微笑】。
そして、
――【戦姫】(いくさひめ)
エルマは心の中で呟いた。
冷や汗が流れる。
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