25887人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
姉は姫に甘んじるようなタイプではなかった。
すすんで戦場に赴こうとする。
そのときにハラハラするのはまわりの者だった。
姉は紋章が使えない……使わないかわりに、剣術の訓練を主にやっていた。
エルマたちの父親は紋章魔術が苦手で、剣術にのめり込んでいたから、姉は父親のもと訓練していた。
「エルマ、なにを隠しているか話してください」
エルマが観念して話そうかどうしようか迷っていると、
「――エルマ様!」
一人の少女が門のほうから駆けてくる。
エルマの知っている少女だった。エルマの護衛紋章魔術師の少女だ。
少女はなにやら慌てているふうであった。
「どうしたの?」
エルマは姉に剣を突き付けられたまま、少女に聞いた。
少女の登場に姉の凛とした雰囲気が和らいだのに気づき、ホッとする。
最初のコメントを投稿しよう!