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少し時間が遡る……。
イザナとアーシャ。一人と一匹は薄暗い通路にいた。
壁にある蝋燭の炎が静かに揺れている……。
「さて……」
イザナは蝋燭の炎を眺めながら、静かに呟いた。
「百物語をはじめようか」
「マスター」
アーシャは冷めたようにイザナを見る。
「何ですか、突然?」
「そういう雰囲気だし、怪談の話をしたくなるのが当たり前だし」
「……今……そんなことをしている場合ですか?」
「僕はこの場を和ませようと」
「そんなことしなくていいですわ!今、ご自分がどういう立場なのか、お分かりですの?」
「……脱獄?」
まるで人事のように聞くイザナ。
首を傾げていた。
瞬間。
アーシャの爪がきらめく。頭を後ろに揺らしたイザナの前髪数本がちぎれた。
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