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「これじゃあ……」
国から脱獄犯をとらえるためにチームが結成されるかもしれない。
エルマはそのことを心配しているのだ。
「ありがとう」
「えっ……?」
エルマは驚いたように顔をあげた。
「僕のことを心配してくれているんだろう?」
「なっ……違っ……」
エルマは顔を赤くしている。
「だったら、僕を見逃してくれないかな」
イザナはにこやかに言った。
「そうすればお互いに傷つけなくていいわけだし」
沈黙……。
静かな夜の中、エルマの呟きが、ゆっくりと広がっていく。
エルマは【炎】の紋章をなぞった。
「――フレアブレイド!」
エルマが握る杖先に、炎の刃が出現した。
エルマは事務的な口調で言う。
「イザナ=ラグナス。あなたを紋章の王国第三皇女の権限によってとらえます。おとなしくするならよし、抵抗するならこの場で始末を……」
イザナはエルマの顔を眺めながら、笑みを深めた。
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