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イザナスは息子を見なかった。
いや、それは今にはじまったことではないのかもしれない。
イザナスは少年が生まれたときから、まったく見ていなかった。
少年が紋章魔術師としての『才』がないと知ってから、ずっと……
「俺は貴様には失望した。どこへなりといくがいい」
つまりは。
僕に家を出ろと……
若干十歳の子供にとってそれは死を意味することだった。
世界は子供には苛酷。
一人で生き抜くことなどできない。
世界のどこかで戦争をしている場所もあるし、野犬などより狂暴な『魔物』もいるのだ。
「お父様……それはあまりにも」
少女は……少年の妹は口を開いた。
「まったく紋章が扱えない奴は家にはおいておくことなどできない」
父親の言葉は冷めていた。
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