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細かな記録すら残っていない昔
『伝説』と呼ばれる時代
突如として光臨した魔王を打ち倒すべく
世界に散らばる『力』を求め、旅を続ける男がいた
その男は、過酷な旅に耐え、ついに魔王の住まう城へと辿り着く
男と魔王の戦いは熾烈を極め、その余波で魔王城を半壊させたところで
ついに、決着がついた
生き残りしは、後に勇者と呼ばれるようになる『男』
滅ぼされしは、この世界に突如として現れた『魔王』
男が魔王を滅ぼしたことにより、世界はまた人間達の戦乱に埋もれ
勇者と呼ばれし男は、世界から恐れられるようになった
そして、それから数え切れぬ程の月日が流れ
今から約2500年前
突如として、過去に滅ぼされた魔王の子孫が、世界の制圧へと乗り出す
それをいち早く察知した勇者の子孫は、再び魔王を滅ぼすべく魔王城へと乗り込んだ
ギイィィィィ
立て付けが悪いのか、蝶番が錆びているのか、鈍い音を立てて魔王城の扉が開く
正面には、大きな階段と扉、その奥の通路を抜ければ謁見の間だ
『魔王城』などと言われると、妙に薄暗く
入り組んだ迷路のような城を思い浮かべるが、それはゲームの中の話だ
魔王城は魔王の住処であり、生活拠点なのだ
よって、わざわざ迷路のような形にするわけもなく
城の構造そのものがシンプルで、正面階段の脇を抜けると
『トイレ(男性用)』と言うプレートの張ってある扉があり
魔王の威厳もへったくれも無い
だがそれが常識であり、当たり前なことだと知っている勇者は
そのようなことを気にも留めず、謁見の間の扉を開く
『良く来たな勇者よ!! 先祖の恨み今こそ晴らしてくれる!!』
やたらと広い謁見の間、そこにずらりと並んだ
『魔王の子孫達』
その数、642人、その中の代表が、拡声器を使って勇者に言葉を放つ
現在、謁見の間にいる『魔王』は、比較的、若い魔王が多く
年寄りや子供は、謁見の間から更に奥の居住スペースに待機している
『伝説と同じように滅びを与えてやろう、悪しき者よ!!』
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