さくら

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さくらは今日も、帰らない。 「ねぇ、もう一回、しよう」 狭いベッドの上、暖かい布団の中で、さくらは俺の右半身に裸の胸を擦り付けてくる。擦り付けられる俺の胸も裸で、互いの心臓の鼓動と体温が混ざりあうような錯覚に陥った。 師走の空気はとても冷たく、しかしこれでもまだ極限の寒さではない。もっと緯度が高い国では、衣類を脱ぎ、素肌を合わせて抱き合うことすら躊躇われるのではないかと思う。 とは言え、この日本で、快感を得るために、俺達は毎夜のように抱き合う。
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