僕が教師になるまで

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 大学の4年間は順調だった。  けれど、大学院に進学した後、僕は二度めの挫折を味わった。  思うように単位を取れず、留年してしまった僕は、勉強に意味を見出だせなくなって、引きこもりになってしまった。  筑紫大へは一人暮らしをして通っていたから、自炊のできない僕は、おなかが空けば近所のスーパーに買い物には出かけていたけれど。  そんな感じの緩い程度だったからか、引きこもり期間は一ヶ月程度で終わった。  引きこもり打破のきっかけが何だったかすら思い出せないほどのあっけなさで、とても自然に終わってしまった。  けれど、誰とも話さなかったこの一ヶ月間は、人生の中でも郡を抜いて長い一ヶ月に感じられたし、僕の在り方や夢をじっくりと考えた期間でもあった。  僕のこころの深くに、ずっと残り続けている。  定時制や通信制の高校を選んだのは、このときの気持ちを役に立てたいと思ったことが理由だった。  人間関係が難しくなった時代だから、こころに引っかかる不安に、学校生活を邪魔される生徒もいる。  もしくは身体が弱かったり、何かのために働かなければならなかったり……。  理由があって、全日制の高校では勉強をできなかったという生徒は、実はあまりにもたくさんいる。  それなのに、いまの世の中は、あまりにも単位制の高校に対する知識がない。  そんな環境に曝される生徒のために、細やかな配慮がさりげなくできる教師になりたい。  僕はそう思って、学校に向かった。  引きこもりを止めた日、朝日がとても眩しかったことを、僕はいまでも覚えている。
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