修学旅行。

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 一人旅に慣れている僕も、少しわくわくする修学旅行。  一般の人は小中高の3回しか行けない修学旅行に、教員なら何度も行けることは、どこか嬉しい。  でも、そのぶん僕等は責任を負っている。  生徒を引率するということは、すなわち生徒の命を守ると言うことだ。  鞄に必要最小限の荷物を詰めて、ジッパーを閉める。 「よし、準備完了!」  早く寝ないと……。明日は早起きだ。 「おはようございます。桃李アドヴァンス高校通信制、修学旅行A班の生徒さんたち、ここに集まってください。出席取るので、お名前教えてください」  桜梅駅の新幹線改札前で、生徒の出席確認。ひとりひとり名前を聞いて、名簿に○印を書いていく。  制服のような姿の生徒がいたかと思えば、高校生というには少し年齢を重ねた生徒まで。  単位制の高校でなければ、あまり見ないような顔ぶれかもしれないな。  今日の修学旅行も、広範囲に散らばる生徒が一団になって行くものだから、他にも桃李駅から出発のB班、成蹊駅から出発のC班がある。  たしか藤屋さんはB班からだったはず。 「よし、A班は全員ちゃんと来られたね。新幹線の時間はもう少しあるけど、乗り遅れたらシャレにならないのでホームまで行って待ちましょう」  ばたばたとホームに向かう我々御一行。  駅員さんに「行ってきまぁす!」なんてあいさつする生徒までいる。  そうとう楽しみなんだろうな。 「事前に配布したプリント通りなんだけど、新幹線の座席は、この枠の中ならどこに座っても構いません。友達と自由に座ってください。」  僕が生徒にそう話し終わると、ホームにアナウンスが響いて、新幹線の到来を告げた。 「来るぞー。素早く乗ってね」  引率する生徒が全員新幹線に乗り込むのを確認して、僕も中へ。
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