きみとの、であい。

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 その日僕は、僕の提示した時間割案が採用されず、風を浴びたくなって屋上に向かった。  屋上は施錠されており、生徒は立ち入ることができない。  職員室の壁に吊されたいくつもの鍵の中から、屋上と書かれた赤い板が付いた鍵を手に取る。それを握ったまま、職員室のある2階から、6階の屋上へ、僕は階段を昇った。  ドアノブの鍵穴に鍵を差し、ゆっくりと回し、金属製の重いドアを開けると、そこには校舎内では出会えない風が存在する。  その肌寒さに、僕は夏の終わりを感じた。  溜め息を吐きながら、ネクタイに指をかけて、そっと緩めたとき……。  風になびく長い髪と淡い色のロングスカート。  白い肌が太陽をやわらかく跳ね返して、輝いている。  踊るように風を浴びる、女の子……。 「……」  僕は目を擦って前を見直した。何故って、ここに人がいるはずがないからだ。  この世の生き物かどうかも、疑わしいと僕は思った。  僕が鍵を開けたのだから、あの女の子はどうやって、ここに……?  どうするべきかと思いあぐねていると、女の子は髪をかき上げて、ゆっくりとこちらへ顔を向けた。  笑顔だったその表情が、僕を見つけた途端にゆがむ。 「……先生」 「先生、って……きみ、うちの生徒……?」  これが、僕とつぐちゃんの出逢いだった。
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