きみとの、であい。

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 僕が勤務するのは、通信制高校。  ひとことで言えば「自由な学校」だ。  時間割は自分で作り、何を学ぶかも自分で決める。  全日制高校と定時制高校の良い部分を取り入れたような高校で、いわゆる「最後の砦」。  何らかの理由があって、「ここしかない」という状況で入ってくる生徒が多い。  そして、我が桃李アドヴァンス高校の卒業率は3割と、とても低い。  僕は世界史を担当している。  通信制高校の勉強は、郵便でやりとりする「レポート」と、「スクーリング」と呼ばれ、学校で行われる授業と、それらを総括する「テスト」から成っている。  僕ら教員と生徒は、スクーリングでしか会えない。  生徒は、「学校へ登校する負担」は軽いけれど、その分自力で勉強することになり、学習を進めづらくなることもある。  しかし僕らは、生徒へ歩み寄ることは極力しない。  全日制や定時制よりも免れられるものはある。  けれど、そのぶん、全日制や定時制などの高校よりも難しい部分があることは確かだ。  勉強を投げ出してしまう生徒は、楽をするためにここに来た者が多い。  結局、生徒の自主性がなければ、絶対に卒業することはできないのは、どの学校も同じなんだ。  僕は「自由」と「怠惰」を履き違えた、安易な選択で通信制高校に来て欲しくはない。  僕らにできることは、実はとても限られているから。
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