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楼の部屋は、玄関入って前は短い廊下、右にユニットバスとトイレ、左に物置。突き当たりにまたドアが、開けて中は左側にシステムキッチン、リビングルーム。右側にまた一部屋あり、其所が楼の寝室の様な場所。
リビングルームは、料理を如何にして美味しく頂けるか? だけの部屋。つまり完全に食事を摂る為だけの場と化してある。
(あれ? 蓮根どこいった?)
楼は丁度煮物作りの真っ最中。廊下とリビングルームを隔てる扉は現在解放中。
擬音+脅し(?)が聞こえた扉の方を、若干憂鬱になりながらちらちら目を向けていた。
すると、
「うおおっ!?」
玄関に固定されてる筈のドアが中に転がりこんできた。若干ひん曲がってる気がする。
くるくると常識を粉砕しながら、ドアだった物は勢いが付き過ぎてか床に刺さり、何かゴミアートっぽくなっている。
(床が!?)
楼が惚けて居ると、廊下からひょっこり何かが現れた。
「やっぱり、居たじゃん、だね……?」
女の子だ。と、初めて‘彼’を見た人間は錯覚する。何故なら見た目から男には見えないからだが、彼。小山内 怜(おさない りょう)は、正真正銘男の子。
さらさらの黒い短髪、潤う横顔、華奢な肉体、だが男。
「お前……、何でまたミニスカ履いてんの?」
「可愛くない?」
会話がまともじゃない。
「お前男だろ?」
「似合ってれば……、良くない?」
小山内の感覚で会話すると……、「服に男女差別される筋合い、ないでしょ?」と言うことらしい。意味不明。
と言うか、楼からしてみれば小山内は不法侵入者だ。いますぐ出て行ってもらいたい処である。
ゴミアートが突き刺さる床に目を向けながら、楼は考える。何で小山内が此処に来たのか?
玄関ぶち破って床に突き刺さす為? いや、小山内ならあり得るかも知れない。だってミニスカ履いてるんだもの(関係ない)。
「何しに来た、怜」
「君に会いに来てる」
「……俺に何か用事があるのか?」
「用が無ければ来るなとでも? そうだねぇ……、強いて言うなれば、日の高い頃から絶叫して町中走り回った理由は? しかも鬼の如く形相キツく、速くで」
何というか、小山内の話を詳しく聞くと。どうやら楼は色んな所で醜態を晒しながら、門限も破ったヤバい奴。と言うレッテルを貼られたらしい。
「鬱だ……、」
「……あっそう」
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