天津神来れり

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 どたばたあってから現在、楼は就寝前にシャワーを浴びて、一人で自分の部屋のベッドに寝転んで居た。  小山内が部屋に珍入してから今は、5時間程経っている。小山内は楼の料理を食べたら、「ごちそうさま、美味しかったよ!」と、言い残し自分の部屋に帰って行った。 (あいつ、飯の為に来たのか)  あれから、楼は小山内に一応の感謝を心の中で少しだけしつつ、片隅にその事を残すも、部屋のゴミアートを運ぶミニスカ野郎を目の端に入れてやっぱり変な奴だと思いながら、調理中の煮物とは別のシチューの入った鍋を冷蔵庫から取り出して、火にかけて温めてから食べた。  壊れた床と外れた玄関扉は、小山内がちゃんと直した。楼も慣れたものだが、いつも思う。 (どうやってんだ?)  取りあえずドアを床から外し、ゴミアートを持って行ったかと思えば、向こうでガタゴトと音がした後、玄関は既に修理済み。その間約3分。そのまま戻って来て何やらゴソゴソと取り出し、床の前にしゃがみ立ち上がると修理済み。その間約1分。気になった楼は答えを期待せずに聞いた。 「そりゃもうね、ちゃんと直したよ。えっ? どうやったか? 乙女の秘密、だよ」  謎だ。後で確認したがちゃんと治ってるから本当に不思議だ。楼は時々だが小山内が宇宙人だと思う時がある。今も、 「ホント……、変な奴だよな」  ベッドに入ってから考えたが、小山内の未知の修復能力(?)を見て、自分の身に起こった異変も案外普通に思えてきた楼。  思わず呟いた言葉を最後に、夢の中へと旅に出てしまった。精神的に疲れてたからか、案外速く眠りについた楼は、まだ何も知らない只の少年A。明日は意外とハードな1日になることも知らず、すやすやと寝息を立てていた。  ――――AM2時、卯之神町西の森。  夕方に楼が追っ手を振り切った橋と住宅街の先に、その森は雄大に佇む。森には、夜行性の動植物達がうごめいている。  一匹の狸。彼も餌を求め、木の実を採り、生きる為それを食べていた。暫くはその繰り返しだったが、瞬間何かに気づき彼は動きを止める。周りの気配を探ると、どうやら他の夜の生き物達も押し黙り息を殺している。  どうするか? と、彼が悩んで居たその時。彼の左側の草むらがガサガサと揺れた。彼はそれに気づきながらも、その場から体が動かせない事に気付いた。  動けない! 彼は少しだけ、死を覚悟した。  
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