天津神来れり

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 ――――AM7:20。楼の自室。 (暑い、暑い。苦しい、苦しい。痛い、痛い。憎い、憎し。嗚呼……) 「ッ!? ぐっ! ハァ……ハァ……」  毎朝恒例の可笑しな目覚ましが、楼の寝室に鳴り響く。しかし今日の楼の目覚めは、目覚ましが鳴らすけたたましい響きがあったからではない。 「ハァ……ハァー、何だよ。嫌な夢見たな……」  悪夢って奴か? と続けて自分に問いかけてみても、そうだ。などと簡単に答えが出せる程、もう内容の殆どを忘れかけていた。  何か……、何かが自分も周りも酷く憎み、悲しみ、怒り、苦しんで居た様な、 (あれ、俺? 泣いてる?)  楼の目の端を、雫の線がつらつらと綺麗に流れて、頭の下の枕に落ちて行く。楼は部屋の天井を見つめ、何故自分が泣いているのか分からなくて、気持ちの整理をしようとする。  漠然と悲しみや口惜しいという思いが胸を占めて行く。その思いは楼の意思とは関係なく、肥大していく。  何で? 何故? 自分が何を? 気持ち穏やかに営み、育み、死んでいく世界で。何故自分が祟り神等にならなければならない? 何故? 何で? 誰か、誰か早く、早く私を鎮めて! 嗚呼憎い。私は私が憎い。お前ら皆憎い。嗚呼……。 我、荒ぶる神として災厄をもたらさん。 「…………、」  楼の意識は今無い。楼は今、何処か遠くに飛ばされた様な感覚に陥ってしまった。顔は無表情と言うより若干怒りが見てとれる。姿は何時もと変わらないのに、見開かれた目が異常を際立たせている。  楼の瞳が真っ白な白眼へと変貌していたのだ。  普段は綺麗な黒と茶色の瞳が、今は大きく見開かれた目には無く。無表情に白眼という訳の分からない威圧感を放ち、部屋の中で横になり今や今かと滞り何かを待つ。 「……、」  一言も発しずに憎しみと怒りを自分と世界にぶつける楼。  しかしその状態は、数分経たず落ち着きを取り戻し、楼の心からその奇妙な思いは、薄ぺらい記憶の中に記されるだけとなる。 「おっはよー! ご飯食べに来たぞ、奴隷35号~!」  小山内 怜が楼の部屋に無遠慮に入って来たから。だが、楼の様子を見て小山内のにこやかな表情が険しくなる。 「……やっぱり、昨日だよね。シンちゃん」  小山内は何事か呟き続ける。 「シンちゃん。本当は僕も君を巻き込むのは本意じゃないよ。けどねシンちゃん、人には役割が与えられてるの」  
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