天津神来れり

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 敷地に東京ドーム3個入ります。が、歌い文句のスーパーマーケットの出入口。  自動ドアの前に、両手いっぱいの白い大きなビニール袋を持った少年がひとり。 「か……、買いすぎちゃったかなー?」  自動ドアが開き、歩き出す少年。スーパーマーケットを出て直ぐ目の前は駐車場になっているので、右手にある駐輪場へと行くため、右に曲がり建物の外壁に近い自転車へと、歩みを進める。  行きながら少年は財布の残金について考えてみた。  少年は私立中高一貫の、若干大きな高等学校の若干特殊な寮に去年から、親の管理下から半分だけ抜け出し、寮の部屋に1人で住んで居た。そこでは食事が自給自足な部分があるので、今までは朝を抜き、昼は学食、夜はコンビニ弁当というただれた食生活を続けてきた。  まだ彼は、高校1年生なのに、まるで自立したキャリアウーマンの様なサイクルに慣れてしまっていた。  住に関して言える事は特に無い。親が寮の3年分になる費用を出してくれたので、家賃という物はほぼタダ。  あとは食費と、ちょっとしたお洒落に気を使う程度の小銭に、若干アホな悪友との付き合い、それらを仕送りで貰っていた。 「ジャンプ買えないな。仕方ないな。コレも親父があの本を買わせたからじゃ、うんうん。仕方がないから、立ち読みするしかないな? うん」  元々、仕送りは多く無い。だから万年キング・オブ・金欠。  金欠は慣れればどうとでもなるらしく、今は月の半ばで、どう考えても漫画を買わないだけでは、月末まで持たない状態の筈なのだが、能天気に本屋を思い出し、月末に悪夢を見る事から現実逃避した。 (まだ何も知らない、いたいけで従順な子供を捕まえて、料理への道を開拓した鬼畜親父めっ!)  だから立ち読みは正しい事なのだ。と、本屋の親父に対して歪んだ理由をつける少年。  ともかく、あと半月どう過ごすかは忘れて、立ち読みでギネスがあったら記録作ると意気込み、親父への制裁を決意した。所謂八つ当たりだ。  そんなこんなしてる内に、自転車置き場に置いておいた『自分の自転車』の前まで来た。  名前は『浪花号』、正体はママチャリ。  鍵を開けようと、右手のビニール袋をハンドルの前方に付いている篭に入れて、それから後輪に付いた鍵穴に、ポケットに入れて大事に持っていた鍵を差し込み、動ける様にする。がしかし、  
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