天津神来れり

6/34
前へ
/68ページ
次へ
 向かい合う男に若干だが違和感を感じ、後退りしてる自分に気付いた楼は、苦悩した。 (相手が謝罪してるってのに、俺って奴は! 駄目だ駄目だ、彼だって本当に悔やんでいる筈なんだ。雰囲気だけで他人の心の中が見える訳じゃないん……――、)  楼が脳内で必死になって、リーダーはいい人の筈さ! とか考えてる時(凡そ0.5秒)に、リーダーがむくりと頭を上げたその時。楼はリーダーを真正面から見た。  ポン! 「あぁそうか、背が高いんだ」  何かすっきりした楼が気付いた事その1『リーダーは、背がむっちゃ高い』。座高だけで1,5mは、有るんじゃなかろうか?  律義なのか真面目なのか、彼は半歩下がってから腰を斜め45゜傾けていた。正面からだと威圧感が半端ない。  と、言うことはつまり……。距離感をも熟慮しての謝罪! (あ……、謝り慣れてやがるだけかコイツ?)  楼をデフォルトしたら、多分、全身から嫌な汗が滝の如くダラダラと流れている事だろう。 (凄まじく、い……嫌な予感がする……。てかやっぱ怖ぇー! 超ぉー怖ぇー!)  今まで剃りこみリーダーとその愉快な仲間達は、黙って楼の様子を伺っていた。と、楼は勝手に思っていたが。 「……い……と、言った、か?」  リーダーはうつ向いていた。仁王立ちで頭だけが地面を見ていた。手が震えてる。力を入れ過ぎてブルブルと震えている。 「え……、はい?」 「俺を、……かい……と、言ったのか?」  よく見ると、剃りこみ集団全員が下を向いて、リーダー以外「兄貴……、兄貴ぃ……!」と、泣いていた。 (殺気!? 多い……、来る!)  天の声(第2精神的な)が聞こえた瞬間。楼は、本能と逃走心を駆使して走り出した。  『浪花号』を置いて。 「俺を! でかい! と! 言っ……たかァァああああ! 久美ちゃああああん!!」 「いや誰だよっ!?」 (しまった~。思わずツッコミ入れてしまった!) 「待てやこの罪作りがぁあああ! 兄貴の隣に来いやぁああ!」 「かっわっいっ娘ちゃっんがァァああああ!」 「訳分かんねぇ!!」  走り出す若人達。  青春も、真っ青な顔で真っ赤な未来を想像できる少年がひとり。  これが約20分前にあった出来事。  
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加