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向かい合う男に若干だが違和感を感じ、後退りしてる自分に気付いた楼は、苦悩した。
(相手が謝罪してるってのに、俺って奴は! 駄目だ駄目だ、彼だって本当に悔やんでいる筈なんだ。雰囲気だけで他人の心の中が見える訳じゃないん……――、)
楼が脳内で必死になって、リーダーはいい人の筈さ! とか考えてる時(凡そ0.5秒)に、リーダーがむくりと頭を上げたその時。楼はリーダーを真正面から見た。
ポン!
「あぁそうか、背が高いんだ」
何かすっきりした楼が気付いた事その1『リーダーは、背がむっちゃ高い』。座高だけで1,5mは、有るんじゃなかろうか?
律義なのか真面目なのか、彼は半歩下がってから腰を斜め45゜傾けていた。正面からだと威圧感が半端ない。
と、言うことはつまり……。距離感をも熟慮しての謝罪!
(あ……、謝り慣れてやがるだけかコイツ?)
楼をデフォルトしたら、多分、全身から嫌な汗が滝の如くダラダラと流れている事だろう。
(凄まじく、い……嫌な予感がする……。てかやっぱ怖ぇー! 超ぉー怖ぇー!)
今まで剃りこみリーダーとその愉快な仲間達は、黙って楼の様子を伺っていた。と、楼は勝手に思っていたが。
「……い……と、言った、か?」
リーダーはうつ向いていた。仁王立ちで頭だけが地面を見ていた。手が震えてる。力を入れ過ぎてブルブルと震えている。
「え……、はい?」
「俺を、……かい……と、言ったのか?」
よく見ると、剃りこみ集団全員が下を向いて、リーダー以外「兄貴……、兄貴ぃ……!」と、泣いていた。
(殺気!? 多い……、来る!)
天の声(第2精神的な)が聞こえた瞬間。楼は、本能と逃走心を駆使して走り出した。
『浪花号』を置いて。
「俺を! でかい! と! 言っ……たかァァああああ! 久美ちゃああああん!!」
「いや誰だよっ!?」
(しまった~。思わずツッコミ入れてしまった!)
「待てやこの罪作りがぁあああ! 兄貴の隣に来いやぁああ!」
「かっわっいっ娘ちゃっんがァァああああ!」
「訳分かんねぇ!!」
走り出す若人達。
青春も、真っ青な顔で真っ赤な未来を想像できる少年がひとり。
これが約20分前にあった出来事。
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