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それでも、自分の体は素直だった。少しずつスピードが落ちてきている。
さっきまではルカの前を走っていたはずなのに、いつの間にか彼は横にいた。
「ラン、少し休もう。このまま行ったら倒れるよ」
「嫌よ、休んでたらあれらに追い付かれるわ」
心配をしてくれるのは嬉しいが、それでは走っている意味がなくなってしまう。
自分達を追い掛けている複数の気配は、もうすぐ近くにあるのだから。
「でも、もうランは限界だし」
相変わらず心配そうな声。いくら大丈夫と言っても、彼は信じない。
それだけ、自分が傷付いているのだから当たり前だとは思うが。
「大丈夫よ、私はまだ大丈夫」
ルカに笑いかけた時、ランデールは自分の顔が強張るのを感じた。
すぐ近くまで来ていた気配が、いつの間にか自分達を取り囲んでいたからだ。
「囲まれた」
「……ルカ、私の後ろへ」
怯えるように縋り付いてくるルカに、押し殺した声でそう告げた。
彼は言われたようにランデールの影に隠れて、周りの様子を見守っている。
「悪魔、出てきなさいよ!」
ランデールの言葉とともに、人の形をした化け物が出てきた。
姿はまるっきり人だが、宿している気配は全く違うものになっている。
そしてその瞳に宿るのは、理性などではなくただ本能だけだった。
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