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大小様々な石が転がっている山道を、二人の子供が必死で走っている。
先に走っているのは、フリルがふんだんに使われた漆黒のドレスを着た少女だ。
そんな少女は体中に傷を負いながら、必死で何かから逃げていた。
走った道には点々と赤い液体が零れており、自分達の居場所を知らせてしまう。
本来は美しいであろうその髪は乱れ、爛々とした瞳には憎悪が宿っている。
「おのれ、悪魔風情に私が傷付けられるとは!」
悔しくて唇を噛み締めた。今の自分には、圧倒的に力が足りていない。
だからあれらに、これだけたくさんの傷を付けられたのだ。
自分が手を引いているのは、まだ十代になったばかりに見える少年。
綺麗な顔には表情というのがほとんどなく、自分と同じ黒い髪は走る度に左右に揺れる。
その少年は、自分を見上げて少し心配そうに紫の目を細めた。ついでに眉も下げている。
「ランデール、大丈夫?」
「えぇ、心配しないでルカ。私は全然大丈夫だから」
ルカの心配そうな視線を感じて、ランデールは大怪我を負っているにも関わらず気丈に笑う。
本当は倒れてしまいそうだとしても、この子にだけは心配をかけたくない。
自分を信じてついてきてくれているルカには、絶対に。
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