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――そもそも私は女であって、普通は女の部屋に男はずかずか入ってこないものだ。
そんな男は不躾な人なんだと相場は決まっている。
だが、彼にそんな常識は通じると思えなくなってきていた。
それに彼は私のことを何故か男だと勘違いしている。
確かに胸は大きくはないし声が可愛らしいわけでもない。
むしろ俎板と言われても仕方ないし、母似のハスキーボイスだ。
……やべ、自分で言っててちょっと切ない。
とにかく、制服はパーカーのようなローブさえ着ていれば何を着ようが自由で、私は動きやすさ重視でスラックスにしているし。
……そうやって男のようだからといって、女の部屋に勝手に入っていいはずがない。
そんな考えが一瞬のうちに頭の中を駆け巡り、ようやく絞りだした声はか弱いものだった。
「……あの、何で居るんですか。シドさん」
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