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「……聞いているのか?」
見惚れる相手も彼で、そんな私を現実に引き戻すのも彼だ。
でも靡く銀の髪に目を奪われないほうが可笑しいんじゃないだろうか、なんて思うけど。
周りだってこっちを見ているしね。
いや、落ち着け。
いくら美しくても彼は私を踏んずけた男だ。
そうやって百面相する私を彼は訝しげに見ていて、私は慌てて取り繕うように言った。
「あ、ええと、私はセラ・A・ルークと申します」
「セラか。女のような名だな……む?」
どうやら、私一応女なんですがという言葉は彼には届かなかったようだ。
いや別にいいけどさ……。
銀色の彼はホワイトボードを眺めて、それから私に向かってにっこりと笑った。
「俺様の名はシド・Y・ランディ。光栄に思えよ、セラ。
貴様は俺様と同じクラスだ」
――嗚呼。
どうやら前途多難のようです、母さん。
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