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意外、だった。
俺達は任務以外の事をお互いに詮索した事なんてなかったから。―――ましてや互いの心情など……。
ふ、と息をつき、しばし間をおくと、カナリヤの真っ直ぐな瞳に見つめられているのが分かった。
その視線をひしと感じながら、俺は初めて、自分のウチガワを暴いた。
「……俺が、お前と初めて会ったあの日。―――男を撃った。
その男は…震えて、いた。
男に、引き金は引けない。そんな事、知っていたのに―――俺は……。」
心なしか、声が震える。
カナリヤは黙ったまま、俺の言葉を聞き入れていた。
「…飢えた狼が聞いて呆れるよなァ、ヒト一人撃っただけだ…ってぇのに。
…それがずっと、忘れられないなんてさ…ッ。」
自嘲気味に言えば、最後はもう言葉にならなかった。
「…家族が、いたんだ」
「うん、」
「…小さな子供も、奥さんも。」
「うん、」
「…あんなに震えていたのに、俺を撃てるわけなかったのに。」
「うん、」
「…俺が、殺した。」
「うん、」
一方的に弱弱しい台詞を吐く俺に、カナリヤは律儀に応える。
見事に震えだした拳を握り締め、目尻に込み上げてくる熱いモノをじっと耐える俺の背に、温かなものが触れたかと思うと、
ギュ、と抱きしめられた。
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