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凍りつく空気の中、黙ったまま男を見据える。
すると男は勢いよく胸ポケットに手を突っ込むと、そこから拳銃を取り出し、その銃口を俺に向けた。
(さすがボスが目を付けるだけのトコだぜ。
拳銃、持ち歩いてやがる……)
チ、と舌打ちをした後、俺も自慢の拳銃を男に向ける。
瞬間、男の顔が一気に引きつるのが分かる。
その後、ガタガタと振るえだした男の姿を見て俺は、だけど、と思った。
―――だけど、この男に、俺は撃てない。
男は、自らに向けられた黒い凶器に増大な恐怖を感じて震えている。
もはや、声も出せないくらいに。
引き金に当てられた指も、硬直するくらいに。
(この男に、俺は撃てない。
―――俺は、危険じゃあない。)
そう確信していたはずなのに。
ガクン、と男が震えに耐え切れず床に膝をついた瞬間。
パァン。
知っていたのに俺は。
気付いた時には、自慢のピストルの引き金を―――いとも簡単に引いてしまっていた。
反射的、とでも言おうか。
それはあまりにもあっけなかった。
男の額には、綺麗な弾痕。
無理もない、
俺はコードネーム”飢えた狼(コヨーテ)”。
狙ッタ獲物ハ、外サナイ――…
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