Little love birds

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声もあげず崩れ落ちた男を残して、俺は足早に建物を出た。 徐々に明るみを増す裏通りを駆け抜けながら思う。 確か、あの部屋にカメラは存在しなかった。 指紋だって残してないし、部屋だって荒らしてない。 俺がデータを盗った証拠なんて、残ってない。 俺が男を殺った証拠なんて、残ってない。 (―――俺は、きっと捕まらない。) 絶対的な、確信。 予想外な出来事は起こったにせよ、”飢えた狼(コヨーテ)”は今宵も、狩りの成功を収めたのだ。 ―――もう、どれくらい走っただろうか。 あの建物から、ある程度離れた路地の、小さなベンチに腰掛けて息をつく。 今宵の任務は終わった。 ボスに言われたデータも手元にある。 (……これが俺の、生きる術。仕方のない事だ。) 走ったせいで乱れた呼吸を整えながら、俺は俺に言い聞かす。 ヒトを撃ったのなんて、実際問題初めてじゃなかった。 これまでの任務で、拳銃を向けたヤツなんて沢山いるはず。 ―――それなのに、何故だろう……? あの時の光景が、脳裏に焼きついて離れない。 ……あの写真の、幸せそうな顔が。
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