序章 ~悲劇の始まり~

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序章 ~悲劇の始まり~

「陽ちゃんが悪いのよ!陽ちゃんが私を追い詰めたのよ!」  目の前でしゃがみ込んでいる女を目の前にして、男は表情を青ざめたまま、その場で固まっている。  淡いブルーのワンピースには所々、どす黒い染みが付いている。  その染みが何なのかを、男はすぐに気付いた。  女の後ろには胸から血を流してうつ伏せで倒れている男がいる。  そう、女が男を包丁で刺したのだ。  血塗れの包丁を前にして、返り血を浴びた女は声を上げて泣いている。  だが、男は女よりも胸を刺されている男の方が心配だった。 (このままだと、彰吾さんが死んじゃう!)  しかし、体が全く動いてくれない。  女の悲痛な姿を前にして、男は何も出来なかった。  女は泣きながら『陽ちゃんが悪いのよ・・・・。』と、呪文のように繰り返し呟いている。  それが、その場から動けないようにするために呟いているように思えた。 (どうして?どうしてこんなことに!)
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