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大学内でも彰吾が香里と付き合っている話題で持ち上がっていた。
講義が始まる前、陽一は隣りで数人の男女が彰吾のことで話しているのを聞き耳を立てていた。
どうやら彰吾は昔から女にもてていて、香里と付き合うまでに、女と付き合ったのは二桁を超えているようだ。
また、彰吾が付き合う女性は大体が同年代か年上ばかりなので、今回の年下との付き合いは注目の的だという。
陽一もたまに中庭や食堂で楽しそうに話している香里と彰吾の姿を見かける。
香里からは毎日のように彰吾とのデートや話した内容をメールで逐一送ってくるので、いい迷惑だった。
怒りのメールを送ったが、無視された。幸せの余り、周りが見えていないのだ。
それは同時に、陽一の心に影を落としていた。
(判らない。自分の気持ちが・・・。どうしても判らないよ!)
授業にも読書にも集中が出来ず、バイトをしても脳裏から二人が一緒にいる姿が焼き付いて離れない。
何かに集中しなければと、陽一は書庫整理の外に大学の最寄の駅前にある本屋さんでバイトを始めたのだ。
たまたまバイト募集の張り紙を見たので、陽一はすぐに面接をお願いし、採用が決定した。
体を動かしていないと、嫌な事が忘れられないと思ったのだ。
自分の体にムチを打ち、学校とバイトという生活を送っていた陽一に、教授から書庫整理のバイトの完了というお達しが出た。
陽一が完璧に整理してくれたおかげで、教授も助かったと言ってくれたので、一生懸命に書庫整理のバイトを頑張って良かったと心から思った。
そのお礼を兼ねて、教授は知人と一緒に陽一を食事に誘ったのである。
その日はバイトもなかったので、陽一は快く承諾した。
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