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陽一がその場からいなくなった後、彰吾は香里を自宅まで送ると途中にあるコンビニ向って歩き出した。
コンビニの駐車場に自分の車を置いて香里を自宅まで歩いて送ったのだ。
香里から陽一の家とは隣同士だと聞いていた彰吾はふと、歩くのを止めた。
そして顔を上げ、陽一の部屋だと思われる窓を見たのだ。
さっきの様子だと、既に家には帰宅して自分の部屋にいるだろう。
明かりが点いていないのは、寝たのかお風呂に入っているかのどちらかだ。
しばらく真っ暗な部屋を見つめていた彰吾は、視線を戻すと再び歩き始めた。
コンビニに向かう間、彰吾はさっきのことを思い出していた。
痛みで表情を歪ませていた陽一を見て、頭に血が上っていた。
思わず守ってあげたいと思っていた。
今まで。いや、過去付き合っていた女にすら、そんな感情は一切沸いてこなかった。
香里にもだ。
それなのに、同性である陽一を見て思ってもいなかった行動を取るとは、自分でも驚きだ。
「俺は、片瀬陽一が好きなのか?」
思わず、口に出して自問自答する。
答えがすぐに判るのなら、苦悩しない。
同時に、既に自分の中で答えは出ていることに気が付いた彰吾は、携帯を取り出すとメールを打った。
メールの送信相手は香里。
(彼女には悪いが、片瀬君の番号とメアドを聞こう。)
罪悪感と共に、彰吾の気持ちは既に陽一で一杯だった。
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