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香里は怒った口調で文句を言うが、彰吾はちゃんとした態度で対応をする。
その様子を香里の後ろから見た陽一は、いつの間にか涙を流していた。
(俺は香里に嘘を付く事が出来ない。俺は・・・・。)
一人で考え込んでいる時だった。
「判ったわよ!彰吾さんの馬鹿!」
香里の甲高い声が耳に入り、陽一はハッと顔を上げた。
同時に、彼の横を涙を流しながら怒った表情の香里が通り過ぎて行ったのだ。
一体何が怒ったのかが判らずにいた陽一に、彰吾がハアッとため息をつきながら愚痴をもらした。
「やっと納得したか。疲れた・・・。」
「彰吾さん?」
「ああ。香里には後日、お詫びをするっていうことで納得してもらったけど・・・。しばらくは不貞腐れているな。」
「・・・・・。」
「さあ、行こう。こっちに車を止めているから。」
「いいんですか?香里を怒らせたままで?」
「後で詫びのメールでも入れておくよ。早くしないと駐禁を切られる!」
そう言って、彰吾は陽一の手を取るとダッシュで車を止めている場所へと向かった。
手を掴まれた陽一もしっかりとダッシュをする。
この時、二人の様子を香里がしっかり見ていたのを、二人は全く気付いていなかった。
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