偽りの関係

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「何で香里が?」 「いいじゃない!昔はお互いの家で寝泊りした関係なんだし。」 (そういう問題じゃない気がする・・・・。)  これは、香里が陽一を=異性として見ていないということだ。  複雑な心境のまま、陽一は中に入ると自分の部屋に戻った。  今日の講義は午後のみで、本当なら彰吾の部屋でゆっくりと二人で過ごしてから学校に行こうと思っていたのだ。  カバンの中から携帯を取り出し、画面を見ると彰吾からのメールが二件入っていた。  きっと、黙って部屋を飛び出してしまったからだ。  申し訳ないと思いながらも彼のメールを無視した陽一は、充電機に携帯を差し込むと部屋を出た。  朝食を食べていないからだ。  リビングに入ると、どうやら母親が陽一の朝食を用意して、香里と楽しそうに喋っていた。  席に着き、母親が用意してくれた朝食を食べ始めた陽一に気が付いたのか、二人はご飯を食べている陽一に話しかけてきた。 「あんた、友達の家に泊まったんじゃないの?」 「忘れ物をしたから戻ってきたんだよ。どうせ講義は午後だし。」 「あっそ。」 「てか、何で朝から香里が家にいるんだよ。おかしいだろ!」  お茶を飲みながら香里がいることにイラッとしていた陽一に、香里は舌を出しながら反撃を始めた。 「いいじゃない。陽ちゃんに話したいことがあったから家にいったらいないって言われて。ちょうどおば様から美味しいお菓子があるからってお茶のお誘いを受けたのよ。」 「母さん!」 「いいじゃない!それよりも、早くご飯を食べちゃいなさい。」  言いたいことだけを言って、母親は席から離れると洗面所へと向かった。  ちょうど、洗濯機の終了音が鳴ったのだ。  母親がいなくなり、二人だけになったキッチン。  陽一は黙々とご飯を食べていると、香里が神妙な表情を浮かべながらハアッとため息をついた。  当然、陽一は先ほどの彰吾の携帯の着信履歴に載っていた香里の名前を思い出した。 「ねえ、陽ちゃん。」 「何?」 「陽ちゃんと彰吾さんって仲が良いんだね?」 「何で?」 「さっき、朝一で彰吾さんの携帯に電話を掛けたの。それで話がしたいから今から彰吾さんの部屋に行ってもいい?って聞いたら怒られたの。」
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