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どうしたらいいんだろうと悩んでいる彰吾を無視して、陽一は帰ろうとその場から離れた瞬間、彰吾は無意識に陽一の腕を掴んでいたのだ。
(これはまずい!)
彰吾は慌てて、陽一に一言、告げた。
「今から二人で食事をしないか?」
「何でですか?俺は香里じゃないですよ?」
「真崎さんは抜きに、片瀬君と二人で交流をを深めたいんだ。」
「・・・・・いいですけど。」
(良かったあ!)
陽一の承諾を得た彰吾は心の中でガッツポーズを取っていた。
一方、陽一の方は香里の名前を出されたら断り辛いと思い、渋々と承諾したのである。
彰吾と一緒にキャンパスを出た陽一は、すれ違う度に女の視線を感じ取っては隣で歩いている彰吾の横顔をチラチラと覗いていた。
確かに同性から見ても、彰吾は格好良いと思う。
スラッとした体型に高身長。多分、百八十以上はある。
陽一が百七十五センチなので、それは確実だ。
陽一の視線に気が付いた彰吾はきょとんとした顔で彼を見たが、陽一はすぐさま視線を外すと口を開いた。
「桐嶋さんはもてるんですか?」
「どうだろうねえ。高校の時からラブレターとかもらっていたから、多少は自覚があるよ。」
「そうですか・・・。」
「片瀬君は?結構格好良いと思うけど。」
「お世辞はいいですよ。俺は昔から本ばかりを読んでいるので、暗い人間だと思われて相手にされていませんでした。香里だけですよ、俺の側にいた女の子は。」
「そうなんだ。でも、俺は片瀬君に興味があるよ?」
「?」
「真崎さんから君の事を色々聞かされてね。どんな子だろうかと思って紹介してもらったけど、想像していた以上だった。」
(香里の奴、どういう風に俺のことを話したんだ?)
聞きたくても聞きにくいと思いながらも、陽一はいつの間にか大学の裏側にある駐車場に到着していたのに驚きを隠せなかった。
驚いていると彰吾がポケットから車のキーを取り出し、助手席のドアを開くと『どうぞ。』と案内した。
(気障な素振も様になっている・・・。香里が好きになるタイプだな。)
香里の好きなタイプはジェントルマンタイプである。
それを小学校の頃から毎日のように聞かされた陽一はうんざりしていた。
そして彼女が気になる人がいる!という話を聞く度に、陽一は冷静に『どこがジェントルマン?』とツッコミを入れていた。
もちろん、一発殴られて怒られるというのがオチである。
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