惹かれ合う二人。

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 香里のこともあり、陽一にとって恋愛とは大事なものだとは思わなかった。  女の子よりも本が読みたいという気持ちが勝っていたので、初恋すら体験した事がないのだ。  同時に、大学に進学してからも恋愛よりも文学が勝っている、根っからの本好き人間になっていた。  助手席に座り、シートベルトをすると、彰吾が運転席に乗った。同じくシートベルトをすると、車を発進させた。  車はプリメーラの新型で黒だ。もっと高級そうな車を乗っているイメージのある彰吾に、陽一は思わず聞いてしまった。 「桐嶋さんは・・・。」 「経済学部三年生。旅行好きのサークルの副リーダーをしながら、父の仕事を手伝っている。」 「お父さんの仕事って?」 「不動産だよ。俺は休みの日や時間が空いていると社会勉強で父の仕事を手伝っているんだ。まあ、学費を出してもらっているから仕方がないけどね。」 「お住まいは?」 「大学の近くでマンションを借りているよ。自宅からだと遠いし、車で一時間は掛かるんだ。まあ、今借りているマンションも車で三十分弱のところだよ。」 「はあ・・・。」 「片瀬君は自宅だよね?真崎さんが一緒に行こうって誘っても無視するって怒ってたよ。」「だって、香里と一緒なんて微妙なんですよ。幼馴染だし。」  彰吾は安全運転を心掛けながらも、陽一と話をしていた。  陽一の質問から、いろいろな方へと話が展開されていく。  香里のこと、陽一のこと、彰吾のこと、大学でのことなど、時間があっても足りないぐらいの内容の濃い話だ。  車は次第に駅前へと着いていた。近くの駐車場に車を止めると、二人は駅ビルの中にあるカフェレストランへと向った。  彰吾が陽一を連れて行ったカフェレストランは、ピザとパスタが美味しいという評判のお店だ。  よく大学の生徒も食べにくるので、陽一もそのお店に関してはある程度知っている。  中に入り、奥の方の席に案内をされると店員にお勧めのメニューを注文した。  今日のお勧めのメニューは、マルゲリータのピザと季節の野菜とトマトソースの平打ちパスタのセットだった。  水をもらい、落ち着くと彰吾は話を始めた。  学部が違うだけで、講義内容が異なることを改めて実感した陽一は、注文した料理が来ても手を付けずに彰吾の話を熱心に聞いていた。  話を聞くのは大好きだ。  人の話ほど、素晴らしい知識を習得するにはいいことだと、陽一なりに考えがあった。
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