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もう家族のことなんて考えなかった。
勢いよくドアを開け、廊下を走り階段を半ば這い上がり、自分の部屋に転がり込む。敷きっ放しの布団に潜り込んで、あたしは声を上げて泣いた。
久しぶりに働く声帯がわんわん歪む。痛い。苦しい。涙と鼻水が呼吸を止める。
何で自分が泣いてるかなんて分からない。ただ悲しかった。怖かった。
彼と会った場所、小中学の9年間通っていた通学路、静謐な空気を纏って。
あたしがなくしたモノ、手放したモノが形を得て襲撃して来た、そんな気がした。
母親だろう、何度かノックが聞こえたけど、かき消すみたいに声を高めて聞かないふりをした。
湿っていく布団が気持ち悪くて、またいっそう悲しくなった。
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