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真冬の早朝に道の真ん中で、あたしとタカウチは話をした。
別に学校に行けばいつでもできるような話を、馬鹿みたいな寒さの中で飽きもせず。
きっとあたしだけでなくタカウチも変なテンションだったんだ。
楽しかった。
ただひたすらに楽しかった。
関係は普通のクラスメイト。特別仲がいいわけでもない。だからこんなに喋るのは初めてで、嬉しかった。
タカウチも楽しそうだった。少なくともあたしから見て。
そのうち空が白んできて、気付いたタカウチが坂の向こうを指差す。
夜明けだ。
真っ白な朝日が遠くのところで顔を出していた。あたしは毎日繰り返されているはずの光景に妙に感動して、すごいね、と呟いた。
すごいな、とタカウチは言った。
何年経っても。全部忘れようとしても。消えるはずのない記憶。
それはただの偶然が生んだ時間で、あたしと彼との距離を詰めたわけでもない。何かが変わったわけでもない。それでも一番大切な、大切な記憶。
忘れたくても忘れられない。
心臓が痛んでも。
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