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「にぃちゃん、今度はおれと寝てくれる?」
うるうるうると濡れた瞳で俺を見る旬。
沸々と沸き上がる感情を抑えるのに必死やった。
「分かったし。今度な」
ぽんぽんと頭を撫でて、俺はそこを後にした。
―――――――――――
「おい。クソ餓鬼。俺がおらん間に家に来るんは止めろって言わんかったか?」
「え?そんなん言われてたっけ?おいら知らんかったしぃ!な、旬」
「もう、とぉちゃんはすぐ怒るんやから!め!よ!」
「…………くっ。たく…香さんは?」
「かぁちゃんなら、買い物!」
はぁ、と深々と槙さんにため息をつかれたけど、気にしない。というか、それさえも、幸せやと思える。
あの日から失ったものが、蘇るかのように。
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