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「降りろや。わかったから。母親呼んでこいや」
そう言ってやるとパァッと表情が明るくなる。
まるで小動物やな…全身で全てを表す。
今の俺にはできやんな。
昔は俺も…
「にーちゃん?大丈夫?お腹…痛い?」
「…は?」
「苦しそう…な顔…」
今度はシュンとした顔で俺を見るから、無意識に…本当に無意識やった。俺の手が旬の頭を撫でる。
「何でもあらへんから、さっさと母親呼んでこい」
「うん!」
ベッドから飛び降り、ドアを乱暴に開けると、ドタドタと階段を降りる音。
「はは。ガキは元気でえぇな」
さて、と。
悪いな…旬。
俺は行く。ここは、俺の様な奴が居る所ではない。
窓に手をかけ、人目が無いことを確認し、庭へ飛び降り、玄関へ向かおうとする。
「オラ。クソ餓鬼。家から出るときは玄関から。しかも、助けてもらった礼も無いんか?」
背後から急に声をかけらた。
振り返るとそこには若い男。
「…あんた、誰」
「お前を担いでここまで親切に運んだ優しい男」
…………自分で言うか?
「俺は頼んでない」
「お前の意見なんて関係あらへん。うちの可愛い息子がどうしてもお前を助けたいゆうから運んだだけやし?」
「…なら、お前に礼を言う筋合いはない」
「じゃあ、旬には言う必要があるよな?」
口は笑ってンのに目はいっこも笑ってへんし…こいつが旬の父親か…。
「……あいつが勝手に言うただけで俺は頼んでへん。帰る」
そのまま歩みを進めようとした俺は油断してた。
そいつの拳が俺の鳩尾に入った。
「な、にすんね…」
ドサリと俺の体は地に着いた。
「ん~久々やったから加減きかんかったかしら…すまんな」
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