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あれから角田は意地になって登校し続けている。
女子の陰口はヒートアップしていた。
角田はキレると恐いから遠巻きにだけど。
「はあ…」
オレは角田が心配で元気がない。
「ため息吐きに来ないでくれる?」
文章が嫌~な顔をして言う。
天気がいいと文章は図書室裏の階段踊り場で本を読んでいる。
それを見つけてオレもちょくちょくお邪魔するようになった。
「だってさ、理不尽じゃないか…」
オレが何か言わんとするのを文章は手を上げて制した。
「また君は同じ話をする気か?」
文章はオレの事を“君”と呼ぶ。
最近オレは文章に角田の話ばかりしていた。
角田が今回の猫事件の犯人ではあり得ない説をアレコレ話していた。
「角田くんは猫だけでなく小動物好きの心優しい少年で、
もし殺してしまったとしてもゴミ箱なんかに捨てたりしない。
お墓立てて手合わせて泣くタイプなんだろ?」
暗記したらしい…
「そうだよ」
「で、確証はないけど嵌めた奴がいて、そいつが許せないんだろ?」
「そうだよ」
「でも君は、ない確証を調べる気もないし、
角田くんの無実を晴らすべく行動する訳でもない」
「そうだよ!!」
「じゃあもう何も考えない事だね」
文章はいつもそう言ってオレを突き放す。
正論だけどさ。なんかなんか。
「下手な同情は罪」
うっっ。
「策もないのに何かしようなんて考えるのは相手の迷惑。ただの自己満足」
うっっ。うっっっっ。
「薄情!!!」
「薄情で結構」
文章にピシャリと言われて、
オレは安心しているのかもしれない。
角田をなんとかしてやりたい。
でも何か出来る訳ではない。
同情なんかしているのは本当に罪なのかもしれない。
文章に言われるとそう思ってしまう。
もう、どうしようもない事を考えるのは辞めよう。
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