1.事件です

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「やっぱ、角田さいてー」 「ちーちゃん、別れて正解だよ」 「ホント、ホント。付き合ってたら殺されちゃうよ」 女子達が角田の悪口で盛り上がっている。 今、角田 vs 女子軍は冷戦状態中なのである。 角田は他のクラスの“ちーちゃん”と呼ばれてる、 ちっちゃくておとなしそうな女子と付き合っていた。 きっかけは角田の武勇伝によると、 無骨な集団に絡まれていた同じ学校の制服女子を颯爽と助け出したらしい。 それが、ちーちゃん。 感激したちーちゃんが角田に愛の告白をして付き合いだした。 角田は柄にもなくデレデレだった。 が、一週間もしない内に、 「皆が付き合うの辞めた方がいいって言うの。別れて下さい」 とフラれてしまった。 それだけなら問題なかったのだが、 「なんで、どうして?」 と、角田が詰め寄ったところ、 「DVしそうって皆が言うから…」 と、ちーちゃんが言ってしまった。 その発言に角田がキレて小突いたら、ちーちゃんが転倒してしまった。 多分、加減はしていたんだろう。 たいした怪我はなかった。 というか、まったく怪我はなかったのだが、 ちーちゃんは 「親にも殴られた事ないのに!!」 の超~お嬢様タイプで、ショックが大き過ぎたようで、翌日から学校に来なくなってしまった。 「やっぱり」 「DV角田」 その日から角田は女子達の敵である。 角田がDVしたためにちーちゃんはショックで休んでいる。 で噂が広まった。 「知った事か!!」 知らんぷりを決めているが、角田は大ショックで立ち直れていない。 自分がしてしまった事にヘコんでいるのだ。 まあ、何もしてないんだけど、すんごい大怪我負わせた気持ちらしい… 実はちーちゃん宅に、 「責任を取ります!お嬢さんと結婚させて下さい!!」 と頭を下げに行っている。 もちろん門前払いされたけど。 角田はマジだった。 学校を辞めて働く気でいた。 住み込みで働く場所も探していた。 何回も何回も頭を下げに行った。 だけどいつも門前払いで話すら聞いてもらえない。 そして警察を呼ばれ、来た警官にキレて殴ってしまった。 もう終わりだと角田は思った。 でも父親くらいの年の温情警官だったらしく、 事情を聞いて角田が殴った事はなかった事にしてくれた。 自分の息子のように角田を諭してくれた。 その温情警官のお蔭で角田は改心し、 ちーちゃんを諦め、こうして学校にも通って来ている。
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