【階段】

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「池田さん?池田さん!?」 倒れこんだまま彼女は立ち上がる気配が無い。 それどころか池田奈緒はのた打ち回り、やがて階段の端から落ちそうになった。 「危ない!」 僕は彼女の腕を掴もうと必死に手を伸ばしたが、寸前のところで掴み損ねた。 彼女の体は僕から見れば上昇しているが、実際は落下しているのだ。 “どうしよう……!同じ方向に落ちるならまだしも、僕は逆方向に落ちてしまう……!空さえ飛べれば” そこまで考えて、僕の思考は止まった。 空を飛ぶ。 できる可能性のある話だ。 僕は半分(ナイトメア)なのだから、ナイトメアや隆哉みたいに飛べるかもしれない。 ただ、飛べない可能性もあるし、何より、飛べたらその時点で自分が人間でないことに気付かされてしまう。 現実を突きつけられてしまうのだ。 けれど、迷っている暇も無いのも事実。 僕は覚悟を決め、空を飛ぶイメージをした。 “飛べ、飛べ……飛べ!!” 床から足が離れ、不思議な浮遊感が僕の体を包んだ。
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