【階段】

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飛べることを確信した僕は、池田奈緒の元へ急いだ。 落下速度は徐々に上がっている。 この空間に底があるかどうかは知らないが、どちらにせよ、助けなければいけない。 “もっと早く……もっと早く!!” 強く念じればそれだけ早くなる。 少しずつだが彼女に近付いている。 “あと少し、あと少しだ!” そう思った瞬間、空間の底が見えてきた。 叩きつけられれば彼女は死んでしまうかもしれない。 「池田さん!」 池田奈緒は僕の方を見て右手を伸ばした。 今度こそ、僕は手を取ることができ、少しずつ速度を落とした。 尚も彼女は苦しげで、青い顔をして胸の辺りを押さえていた。 「どうしたんです?」 「わ、からない……。胸が……抉られてるみたい……」 底に到着すると、そこには色々なものが散乱していた。 写真やテディベア、携帯電話、ギター、漫画……。 「分かったわ……ここが、どこか……」 池田奈緒は消え入りそうな声で呟いた。
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