【階段】

17/17
前へ
/300ページ
次へ
それからのことはよく覚えていない。 気がつけば僕は全速力で夜道を家へと向かって駆け抜けていた。 時々躓きそうになりながらも、僕は今までに無いほどに足を回転させた。 やがて家に辿り着くが、玄関には鍵がかかっている。 鍵は持っているはずなのに、「ナイトメア!頼むから、開けてくれ!」となりふり構わず僕は叫んでいた。 「白?どうしたのです?」 中から実体化したナイトメアが顔を出した。 「顔色が悪いですよ」と心配する彼に、僕は安堵感からか飛びついてしまった。 「あ、白!?どうしたのです!?よく見れば、血が……」 「お前……一歩も出てないよな?外」 「当たり前ですよ!白が留守番しろって言ったんじゃないですか!」 だとしたら、池田奈緒の家での出来事は何だったのだろうか。 あの少女は何者で、池田奈緒は何故自分を何度も刺し殺していたのだろうか。 分からない。 いや、分からないんじゃない。 ここから先に進む事に恐怖し、拒絶しているのだ。 この先に踏み込めば、僕はもう戻れなくなる。 もしくは、もう手遅れかもしれない。 ナイトメアは抱きついたままの僕を拒むことなく、ゆっくりと背や頭を撫でていた。 何故かは分からないが、僕はひどく安心していた。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17903人が本棚に入れています
本棚に追加