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それからのことはよく覚えていない。
気がつけば僕は全速力で夜道を家へと向かって駆け抜けていた。
時々躓きそうになりながらも、僕は今までに無いほどに足を回転させた。
やがて家に辿り着くが、玄関には鍵がかかっている。
鍵は持っているはずなのに、「ナイトメア!頼むから、開けてくれ!」となりふり構わず僕は叫んでいた。
「白?どうしたのです?」
中から実体化したナイトメアが顔を出した。
「顔色が悪いですよ」と心配する彼に、僕は安堵感からか飛びついてしまった。
「あ、白!?どうしたのです!?よく見れば、血が……」
「お前……一歩も出てないよな?外」
「当たり前ですよ!白が留守番しろって言ったんじゃないですか!」
だとしたら、池田奈緒の家での出来事は何だったのだろうか。
あの少女は何者で、池田奈緒は何故自分を何度も刺し殺していたのだろうか。
分からない。
いや、分からないんじゃない。
ここから先に進む事に恐怖し、拒絶しているのだ。
この先に踏み込めば、僕はもう戻れなくなる。
もしくは、もう手遅れかもしれない。
ナイトメアは抱きついたままの僕を拒むことなく、ゆっくりと背や頭を撫でていた。
何故かは分からないが、僕はひどく安心していた。
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