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池田奈緒が死んでから数日が経った。
未だにニュースが流れていないところを見ると、彼女の死はまだ誰にも悟られていないらしい。
警察へ通報しようかと悩んだが、そうなると《ナイトメア計画》の話から始めなくてはならない。
この世界に、そんな空想めいた話を素直に聞いて、しかも信じてくれる人間がいるだろうか。
いたとしても数人に決まっている。
警察が相手となれば尚更だ。
“けど、このままじゃ、僕が犯人になってしまう”
あの部屋にいた時間は長くもないが短くもない。
僕の指紋も髪の毛もあるだろうし、下手をすれば目撃証言もあるかもしれない。
「あ、あの、白!」
「……何?」
「朝ご飯……作りましたけど、食べます、よね?」
池田奈緒の一件から家に引きこもっている僕の代わりに、ナイトメアは進んで家事をするようになった。
表情や言動の端々で、かなり気を遣っていることが窺えるが、僕もそれに対して何も言わなかった。
「……いただくよ」
形の崩れたオムレツとこげたトーストを前にして、僕はゆっくりと手を合わせた。
味は、よく分からなかった。
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