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「で、どこに行くんだ?」
「こっち」
彼女の進むままに僕は繁華街を歩いた。
どこに向かっているのか分からなかったが、それは数分間のことだった。
辿り着いた先の表には、ポップなイラストと文字が躍っており、僕は一瞬立ちくらみを覚えた。
「ここ」
「……一応訊くが、何しにここへ?」
「あれ、食べたい」
少女は店の前に置いてある商品のサンプルを指差した。
「あのくるくるしたやつ」
「……」
もちろん、財布に余裕くらいある。
それを買うことくらいできるが、僕はこういうものが苦手なのだ。
「……これじゃないとダメか?」
「ダメ」
僕は仕方なく、彼女の強請るままにそのアイスクリーム専門店に足を踏み入れた。
実を言うと、こういった店には全く入ったことがないし、苦手なのだ。
けれど、目をキラキラさせた少女を前にして、僕はそんな事を言えなくなった。
「五分だけだからな」
そう言ったものの、結局店を出るのに三十分以上かかってしまった。
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