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「そんな……食べたって……《悪夢》を、って意味だよな?」
「ううん。《死体》を食べたの」
バニラは、自分が何を言っているのかを理解しているのだろうか。
冗談にしては真剣すぎる。
そもそも、彼女は冗談を言うような性格だろうか。
色々な疑問が脳内を交錯する中、バニラは首をかしげた。
「どうして、そんなに驚いてるの?」
「どうして、って……」
「あんな人、いなくなった方がいいでしょ?」
「そんな事ないだろ!あの人がいなくなったら、心配する人がいるだろ!」
「いないよ。奈緒には家族も恋人も友達もいない。奈緒は独りぼっち。だから、私たちを側に置いていた」
珍しく饒舌になったが、バニラの口調は機械的で感情の欠片さえも感じ取れなかった。
「私たち……《ナイトメア》の事か?」
「違う。私たち、人形。二対の人形が彼女の話相手で、遊び相手だった」
「二対?じゃあ、あの部屋にあったのは、僕のところにいるナイトメアのじゃなくて……」
「あれは、私。彼のは別のところに隠してる」
淡々とした口調だが、無駄はない。
恐怖心は拭えないものの、彼女の話は聞くべきだ。
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