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「私は人間が嫌い。願うだけで、苦しむことを避ける。どんなに苦しんでも、彼の夢は叶わないのに……。彼は《人間》になれないのに……それ以上に、人間は何を望むの?」
憎しみか嫌悪か、バニラは無表情ながら怒りを露にしていた。
そして、空を見上げて、深く息を吸い込んだ。
「できることなら、私が彼の願いを叶えてあげたい。けれど、できない。これも、叶わない願い」
「……ナイトメアが、好きなんだな」
「うん、好き。だから、できることはした。彼が外へ逃げられるように手を回したし、邪魔する人は全員食べちゃった。私は後悔してない。悪いことしたと思ってない。これでいい」
おそらくバニラは本当に罪悪感など覚えていないだろう。
ただ、純粋にナイトメアを守ろうとしたのだ。
せめて、自分のできる範囲で彼を幸せにしようと思ったのだろう。
しかしそれは人道からは大きく外れている。
“人形なんだから、人間の法なんて関係ないか”
「……ナイトメアに会う気は?」
「……分からない」
「どうして?」
「会いたいけど、私は彼の名前を忘れてしまったから、思い出すまで、会ってはいけない気がする」
「……?名前はナイトメアだろ?あいつがそう名乗ったんだから、間違いない」
「違う。そんな名前じゃない。もっと綺麗な名前」
それだけ言うと、バニラはこめかみを押さえて考え始めた。
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